Day5 「甘え」

 

 

 今日もまた、朝早く起きなければならなかった。自由に旅をしているはずなのに、ツアーという名の不自由を自ら選んでしまったからだ。ツアーの内容によると、朝の7時にベルベル人の家を出発するということだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 日の出とともに出発する。ラクダ使いのアスマンと私だけが起きて、ベルベル人の家族はまだ寝ているようだった。モハメッド君に、昨日遊んでもらったお礼を言いたかったが、仕方がない。太陽とは逆の方向に進んでいく。

 

 

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 行きと同じルートで、メルズーガの街まで戻る。帰りもアスマンは4時間ラクダを引いて歩きっぱなしだ。何度か私が気遣って、「休もうよ。水を飲んだら?」とペットボトルに入った水を差し出すも、

 

 "no ploblem"

 

を繰り返して、決して休もうとはしない。

 

 

 

 

 彼は本当に文句ひとつ口にせず、同じフォームで、自らの職務である「ラクダ引き」を、ひたすら全うしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の姿をみていて、本当にみっともない考え方だが、「私たち日本人は恵まれている」と思った。単調で、一見つまらなく見える彼の仕事。だが、つまらないからといってこの仕事を拒否してしまえば、きっと彼は食っていけなくなる...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私たちより「恵まれていない」ということに対して、「かわいそうだ」と言うつもりはない。これが与えられた運命だからである。人間は、与えられた環境で生きるしかない。置かれた状況の中でいかにして生きるか。それこそが、わたしたちに与えられた問いなのではないだろうか...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「自分の好きなことをすることは甘えだ」

 

 

と言う日本人がいる。これは、与えられた状況を自覚していないことから生まれる意見のように思う。「自分の好きなことがしやすい」という恵まれた状況下にいるからこそ、好きなことをするべきではないだろうか。私たちに与えられた状況下では、好きなことをしないほうが甘え、ではないだろうか...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言葉を交わすことはほとんどなかったが、アスマンの仕事ぶりからは多くを考えた。学んだ。

 

 

 

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 メルズーガの町に戻ってきた。この次はフェズという街に行くことに決めていた。「モロッコの京都」とも呼ばれる古都・フェズ行きの夜行バスは19時発だった。

 

まだ日が暮れぬうちに、バスは北へ向けて走り出した。