Day13 「Peaceful」

 

 

 朝、船内アナウンスの音で目覚めた。「レストランが開きました。朝食をお召し上がり頂けます」というような内容の、アナウンスのようだ。今、この船はどの辺を進んでいるのだろうか。船が揺れているせいか寝起きのせいか、ふらふらとした足取りで部屋の外へ出る。

 

 

 

 デッキに出てみた。日はすでに上りつつある。風が強く、かなり寒い。目の先にかすかに島のようなものが見える。あれが目的の街だろうか。
 
 
 
 寒すぎて朝日を楽しむこともできず、そそくさと室内に戻った。船内は予想外に小綺麗な内装だった。カーペットが敷き詰められ、暖かい色の照明が、上品に乗客を照らす。豪華な客船には程遠いが、このしがない旅行者に束の間の贅沢を味わわせてくれた。
 

f:id:Ryox:20170609090845j:plain

 

f:id:Ryox:20170609090912j:plain

 
乗客は私以外、欧米人だった。もの珍しいのか、好奇の目が私に注がれた。普段はそのようや視線をあまり気にしない方だが、その時ばかりはなぜか不安な気持ちになった。少し、旅に疲れていたのかもしれなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 そうこうするうちに、目的地に到着した。
クロアチアの観光都市・スプリト。船を降りて、一歩目を踏んだ。そのとき、ふと笑いが込み上げてきた。やれやれ。また未知の新しい国に上陸かい。懲りないねえ。自分の飽かぬ好奇心に呆れる。
 

f:id:Ryox:20170609090958j:plain

 
 
 フェリーを降りても全く客引きがやって来ない。「ここも、そういう国か...」。その辺にいるタクシーの運転手らしきおじさんにわざとらしく顔を向けてみるも、不思議な顔をされるだけだった。いつものように「タクシー?」と勧誘されるのを期待したのだが。ただ、家族を迎えにきていた人のようだ。なんだか、寂しかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 朝の海風の中、途中で買ったホットコーヒーとクロワッサンを手に、海沿いを少し散歩した。なんて平和な街なんだろう。ゆっくりと時間が流れる。
 
 

f:id:Ryox:20170609091133j:plain

 

 

 

f:id:Ryox:20170609091154j:plain

 

 

 

f:id:Ryox:20170609091230j:plain

 

f:id:Ryox:20170609092201j:plain

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 今晩泊まる宿へ向かう。宿の近くへ着いたが、それらしきものが見当たらない。事前に宿主から「宿の外であなたを待っています」と伝えられていたが、わざわざ宿の外でいつくるかわからぬ旅人を待つ親切があるだろうか...。
 
 
 
 
 
 
 
 「Mr.〇〇?」。突然、後ろから私の名を呼ぶ声がした。突然のことで、私はいささか驚いてしまった。振り向くと、温厚そうな30代中盤ほどの男性が立っていた。「Mr.〇〇?」。再度聞かれた。おそるおそるyesと答えると、彼は満面の笑みを浮かべて言った。「私がホステルのオーナーです」。疑いもなく良いひとなのが、その笑顔から伝わってきた。
 
 
 
 
 
 そのホステルは、過去一番の綺麗さだった。それもそのはず、オープンしてまだ1ヶ月も経っていないのだという。きっと、宿を軌道に乗せるため必死に頑張っている時期なのだろう。「コーヒー飲む?」「近くのオススメのレストランを教えるよ」。オーナーは閑散期にクロアチアを訪れた若い旅行者を、この上ない親切でもてなしてくれた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 空が青い。南欧は、いつだってこうだ。その日は特に何をしようという気持ちもなく、日がな海沿いのベンチで海と空を眺めていた。それだけで、十分に心が満たされた。
 

f:id:Ryox:20170609092223j:plain

 

f:id:Ryox:20170609091410j:plain

 

 

 

f:id:Ryox:20170609091441j:plain

f:id:Ryox:20170609092129j:plain